3ヶ月前に愛犬の右足にしこりを見つけ、そのしこりが徐々に大きくなり、最終的に出血が止まらなくなってしまったとの事で当動物病院を受診されました。
今回ご紹介するのは、ゴールデンレトリーバーの足の皮膚にできた高悪性度の肥満細胞腫の治療についてです。この腫瘍は犬の健康に重大な影響を及ぼすため、早期発見と適切な治療が重要です。
肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)は犬の体内にある「肥満細胞」という化学物質を含む細胞が腫瘍化して無制限に増殖し、皮膚や皮下にできものやしこりを形成したり、場合によってはリンパ節や全身に転移してしまう病気で、犬の皮膚に見られる腫瘍の中では比較的よく見られるものです。
肥満細胞腫は、中年齢以上の犬に多い病気ですが、若い犬にも見られることがあります。また、肥満細胞という名称ですが、太っているかどうかの体型には関係ありません。
悪性度の低い肥満細胞腫に関してはしっかりとした外科切除で根治が可能ですが、悪性度の高いものは外科切除の後に化学療法(抗がん剤治療)が必要となります。手術前に細胞検査を実施することで悪性度の判断をすることができますが、実際に取ってみると悪性度が違っていることもあるため切除後は病理診断が必要になります。
今回は腫瘤がかなり大きくしっかりと余裕を持った切除が難しかったことと、既にリンパ節に転移が認められたことから完全に取り去ることは難しいと判断しました。そのため、事前にご家族と治療方針について相談させていただきました。
ご家族と治療方針や術後の事などについて話し合った結果、手術後の生活に支障が出ない範囲で腫瘤を切除し、転移した細胞に対しては化学療法(抗がん剤治療)を行うことで、今後のワンちゃんの生活の質をできるだけ守っていくという治療計画になりました。
外科手術で皮膚のできものをすべて摘出し、その際に生じた大きな皮膚の欠損はお腹の皮膚を使って縫合しました。
摘出したできものは病理検査でも高悪性度の肥満細胞腫と診断されたため、傷が開かないように、また傷が大きくならないように、内服の抗がん剤を週に3日服用する抗がん剤治療を開始しました。
手術から3週間後には、手術部位はきれいに治り、以前のように散歩に出かけたり、手術前のように出血で家を汚すこともなくご家族と一緒に生活できるようになりました。
しかし、術後の定期チェックで少しずつ貧血が進んでいることがわかり、さらに肝臓に転移を疑う病変が認められました。すでに転移していた腫瘍が進行したと考えられます。
徐々に食欲がなくなり内服も難しくなった頃、ご家族から「十分に頑張ってくれたので、もうこれ以上、抗がん治療はせずに家で食べたいものを食べさせてあげて、最後はお家で看取ってあげたい」というお気持ちをお聞きしましたので、抗がん剤治療は終了となりました。
後日、ご家族に見守られながら、自宅で穏やかに亡くなったというお電話をいただきました。
今回のケースでは手術後、約半年間、化学療法と内科治療を実施しました。最後は貧血で亡くなってしまいましたが、手術部の再発はなく、最後までご家族と一緒に過ごすことができました。
腫瘍には悪性度が高く、根治治療が困難な場合がありますが、最後まで一緒に過ごすことができるよう、できる限りのお手伝いをさせていただきます。お困りの際には一度ご連絡ください。
ご家族様におかれましても、愛犬の健康状態に注意を払い、少しでも気になる症状が見られた場合には、かかりつけの動物病院へご相談ください。当院では専門的な診断と治療を提供し、大切な家族の一員であるペットの健康をサポートいたします。
当動物病院は予約優先で診察しております。事前にWEBまたはお電話からご予約ください。
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