1歳になるトイプードルのミックス犬ですが、下腹部周りの表面上に睾丸が1つしか見当たらず、最初からないのかお腹の中に隠れているのかわからず心配になり、当動物病院に来院されました。
今回ご紹介する「潜在精巣」は、小型犬種によく見られる問題です。
通常、犬の睾丸は生後3ヶ月以内に確認できるはずですが、生後6ヶ月経っても確認できない場合は「潜在精巣」の可能性があります。このような場合は、早めに動物病院で診察を受ける事をおすすめします。
通常、精巣はお腹の中に作られ、お腹から後ろ足の付け根あたりの穴から皮膚の下を通って陰嚢に下ります。潜在精巣とは精巣が陰嚢内に下りてこず、お腹の中や皮膚の下で止まってしまう先天的な異常のことをいいます。生後6ヶ月の段階で睾丸が陰嚢内にない場合、その後に下りてくる可能性は極めて少なくなります。個人的な経験では生後8ヶ月以降に精巣が下りてきた犬はまだ見たことがありません。
お腹の中や皮膚の下に精巣がある場合、中年齢以上から腫瘍化が起こりやすくなります。また、子供にも遺伝する異常だと考えられているため、早期での両側睾丸の摘出手術(去勢手術)がすすめられます。上記の写真は今回とは別のワンちゃんですが、急に増大した場合には腫瘍化の可能性が強く疑われますので、早い段階での受診が勧められます。
手術前の超音波検査で、皮膚の下に隠れていた精巣が確認できたので「潜在精巣」と診断しました。
潜在精巣に対する薬での治療法はないため、腫瘍化する前に両側の精巣摘出手術(去勢手術)を行いました。
精巣摘出手術(去勢手術)後、特に異常もなく容態も安定していたので、術後2週間で抜糸することができ、潜在精巣の治療は無事に終了しました。
もし異常に気づかず発見が遅れて精巣が悪性腫瘍になってしまうと、骨髄に影響を与え血液が作れなくなったり、全身のリンパ節に転移する可能性があります。この場合、去勢手術を行なっても根治治療ができず、助けられないケースもあります。
愛犬(オス)の睾丸が1つしか見当たらない、または全く見つからない場合は、早めに動物病院で診察を受けてください。
普段から愛犬の健康状態に注意を払い、少しでも気になる症状が見られた場合には、かかりつけの動物病院へご相談ください。当院では専門的な診断と治療を提供し、大切な家族の一員であるペットの健康をサポートいたします。
■精巣腫瘍のコーギーについてはこちらをご覧ください。
https://yamanobe-dcc.com/case/testicularcancer-corgi
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